現在タイの化学物質管理政策は、ハザードベースからリスクベースへの過渡期にあり、有害物質法のもとで国際的な潮流に合わせた管理制度の導入が進められています。タイ工業省は、2015年2月に開始した“製造・輸入の事実の届出制度(有害物質リスト5.6が対象)”によって得られた情報をもとに、現在、既存化学物質インベントリーの作成作業を進めています。近い将来、既存化学物質インベントリーに収載されていない化学物質は、「新規化学物質」として取り扱われる予定となっており、高懸念物質(SVHC)については健康・環境面でのリスク評価を要求するなど、日本企業にも大きな影響を与える制度が構築される見込みとなっています。
EnviX Asiaのサービス
複雑なタイの有害物質規制に対応するため、法令に精通した日本人およびタイ人の専門家が日本(エンヴィックス有限会社)およびタイ現地(EnviX Asia社)にてサポートさせていただきます。
- 有害物質の届出申請(第2種有害物質)
- 有害物質の製造、輸入、輸出、保有に係る許可申請(第3種有害物質)
- 有害物質の登録申請(第2種、第3種有害物質)
- 既存物質登録申請(リスト5.6に係る有害物質)
- SDSおよびラベルの作成
- CBI申請
- 保管に係る法規制対応
- その他、タイの化学物質規制に係るご相談対応
※上記の手続きには、書面での提出が必要なものとインターネット手続きが可能なものがあります。書類提出が必要な手続きでは、申請にあたり10~20前後の書類が必要で、タイの習慣に基づく形で書類を準備する必要があることから、一定の負担がかかります。タイにおける化学物質規制対応にお悩みの方はまずはご相談ください。
タイの有害物質法について
タイの有害物質法は、仏暦2510年(1967年)毒物法に代わるものとして仏歴2535年(1992年)に制定された法律です。タイにおける有害化学物質管理の法的基盤を構築する重要な環境関連法であり、工業省や農業協同組合省など複数の省庁がその執行に関与しますが、中心となっているのは工業省工業事業局(DIW:Department of Industrial Works)です。本法では、有害物質が第1種有害物質から第4種有害物質まで4分類され、これら有害化学物質を製造、輸入、輸出、所有するに当たっては、以下の要件が課されます。
- 第1種有害物質:法令に従って、製造、輸入、輸出、所有を行う。
- 第2種有害物質:製造、輸入、輸出、所有に際し、届出を行う。
- 第3種有害物質:製造、輸入、輸出、所有に際し、当局の許可を取得する。
- 第4種有害物質:製造、輸入、輸出、所有が禁止される。
具体的な手続きについては有害物質法の下位法令にて規定されており、工業事業局(DIW)が所管する有害物質に係る主な手続きは、下表のようになります。
表:工業事業局(DIW)が所管する有害物質に係る手続き
第1種~第4種有害物質とは??
第1種~第4種有害物質に該当するかどうかの確認に際しては、有害物質法の下で公布されている“有害物質リスト”を確認する必要があります。本リストは、有害物質法の規制対象となる化学物質が列挙されているリストです。現在のリストは2013年9月に公布されたものがベースになっており、すでに3回の改正が行われています(2018年4月現在)。なお、工業用化学品の有害性判定を手助けするためのコンサルテーションシステムがリリースされており、IDおよびPasswordを取得した後で利用することも可能です。
【有害物質リストの構成】
リスト1:農業局(Department of Agriculture)が主管する有害物質
リスト2:漁業局(Department of Fisheries)が主管する有害物質
リスト3:畜産振興局(Department of Livestock Development)が主管する有害物質
リスト4:食品医薬品局(Food and Drug Administration)が主管する有害物質
リスト5:工業事業局(Department of Industrial Works)が主管する有害物質
- 5.1 管理化学品(約500種の有害物質の名称がCAS番号とともに記載されている)
- 5.2 化学廃棄物
- 5.3 中古電気電子機器
- 5.4 その他
- 5.5 化学兵器
- 5.6 特性に基づく規制物質グループ
リスト6:エネルギー事業局(Department of Energy Business)が主管する有害物質